Kiyoshi Yamamoto

山本 清

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座ってみたい北の創作椅子展2008 

(2008年8月9日(土)北海道新聞(夕刊)掲載)

作品は中札内美術村の芝生の広場に展示されている。会場に並べられた作品を通覧し、昨年と比べて一段と充実した作品になっているのを感じた。 この公募展は模型よる審査を経て、実作された作品を対象に各賞が選定される。審査は一人のパーソナリティーに託され、2年間にわたり選考を担当する方式がとられている。私はサーフェスデザイナーとして、さまざまな表層材をデザインする立場から審査にあたった。 昨年は最優秀賞を決めかねたが、今年は最優秀賞1点、優秀賞1点に、特別賞1点を設け、全11点の賞を選定した。2年目にして北の大地のサーフェス(表層)をデザインした椅子が創作され、いずれも水準が高く私の思う成果を得たことがうれしい。

最優秀賞「HEN CUBE」(田淵萬坊)は、鏡面仕上げの変形キュービックを構成したスツール。芝生の緑と青空が投影され、視覚のイリュージョンを覚え、快く大地につつまれる。優秀賞「Transfer of the petaloid」(大塚亮)は、メタルをフラワーパターンでパンチングし、透過した地表をベンチにデザインとして組み込んでいる。最優秀賞は、64歳ベテランの造形表現、優秀賞は25歳の清新な感覚で、いずれも現代的である。

「野外に置くためのベンチ2008A」(高橋完治)の造形はユニークでのびやか。制作に情熱的に取り組んだ姿勢を評価し、特別賞を設け贈ることとした。「風景を映す水たまり」(神崎実)は、記憶の一コマを太陽に輝くオブジェとしてベンチに仕立て、さわやか。「Kirikabu stool」(坂田あずさ)のロウを用いた作品は、仕上げ加工に問題を残すが、素材が魅力的で夢がある。「SKY」(泊里涼子)は透明感のある綺麗な作風を示す。「Clover」(手塚敦)はおおらかで斬新な造形作品である。 本展は極めて私の評価であり、賞に余裕があればさまざまにたたえられるほど皆エネルギッシュである。北の創作椅子展の会場は、自然と対話ができ見応えのある大地の風景である。